「ウェブはバカと暇人のもの」で話題になった作者の続編。相変わらず見事なタイトル。目を引かなければ、興味を持ってもらわなければ存在してないも同然と言わんばかりの挑戦的な文言。このあたり、さすがニュースサイトを運営しているだけのことはあるなと感心。
で、そのタイトルに負けじと前半は刺激的な内容が続く。「ネット教信者と暇人のせいでネットは気持ち悪くなった」と。この分析そのものは浅くて弱いが、読み物としては非常に面白い。
ネットで叩かれている人を並べて、その理由がいかに理不尽かを説明するくだりは、本人たちには気の毒だが爆笑してしまった。半分くらい知らない人だけれど。
しかし当事者は笑い事ではないんだろう。文章は、サポートセンター担当の悲鳴に聞こえる。理屈の通用しない巨大な匿名さん相手に押しつぶされる寸前の著者。
悪意をも強烈に拡大するテクノロジーに、疲れが極限に達しているんだな。そんなに頑張るなよ、と思わず抱きしめたくなる。矢面に立つとはこういうことなんだろう。女子高の教員でも経験してれば、もう少し毒への耐性ができたかもしれないが、そうするとこんな面白い文章も書けないだろうし、世の中難しい。
あくまで個人的な見解だが、炎上に関しては性差について語る必要があると思う。女性の井戸端会議なんて、この程度の悪口は普通だからね。女性グループにおけるジャイアンの存在とかね。まあ、この話題そのものが炎上の原因になるから、触らぬ神になんとやら。詳細は専門の書評家とかにお任せしておく。
で、本書の真骨頂は後半だ。これは前著も同様なのだが、ネットにおけるマーケティング論は実に見事。ネット世界ではどういう内容が興味を引くか、どういうタイトルだとクリックされるか。実体験に基づく貴重な話が目白押しだ。アルファブロガーのように自身がパンダと化している人々には絶対に書けない内容。血と汗と涙の結晶。このパートを誤解されずに読んでもらうには、前半が必要ということか。
ネットで注目を浴びたいと考えている企業やら個人やら。そんな人は必読。どんだけ疲れるかも含めて疑似体験できる。そうじゃない人も、ネットの常識非常識を笑うための良書と言える。ちょっと高いのが難だけど、子供よけか?