東証が「アローヘッド」というシステムを導入したんだそうな。業界では話題なんだけど、私は株式投資なんて興味もなければ金もないので関係ない。でも「まばたきより早く売買成立」なんて売り文句はちょっとカッコいい。カッコいいついでに、この辺で何が起きつつあるのか想像して書いておこっと。
えーっと、売買っつーくらいだから売りたい人と買いたい人がいる。たとえばある会社の株を1株100円で売りたい人がいて、120円で買いたい人がいたとする。これが掲示板みたいなところにズラーと並んでいる。
そしたら急いで100円の株をたくさん買って120円で全部売るわけです。1株につき20円の儲け。簡単ですね。日がな一日モニタとにらめっこして、安いのを見つけて高く買いたい人に売る。いわゆるデイトレーダーのお仕事です。素早さ命。鉄拳とかで遊んでるような指さばきなんですかね。
で、そういう人にとって、売買の高速化は朗報?いやいや、そんな甘っちょろい話じゃない。
「安い株を見つけて高く買いたい人に売る」なんて単純な作業、人間がやらなくてもいいじゃないですか。ぜんぶコンピュータに任せてしまえばよい。そのほうが早いし。要はコストの問題で、より高速に大量に受発注をこなさないと足が出る。
今まではどうだったかというと、そこは日本がほこるITゼネコン様。このシステムが遅いのなんの。しかも、ちょっと注文が増えれば止まる、何もしなくても止まる。PC-9801にN88-BASICで動かしてるんじゃないかという噂もちらほら。こんな化石のようなシステムに莫大な資金を投じてくれるんですから、無知ほど恐ろしいものはないですね。年寄りが仕切る業界はどこもこんな感じ。
で、そんな遅さが幸いした(笑)。こんなポンコツ、ミリ秒単位での売買なんて夢のまた夢。なので海外のハゲタカも敬遠してたわけですね。そうだな。エヴァンゲリオンの第13話「使徒侵入」の回で、マギシステムに侵入を図る使徒に対して、クロック数を落として対抗したってのに似てますね。似てないけど。
ところが、さすがにこれではマズいと気がついた人がいたのか、はたまた不具合続きで誰かのクビがとんだのか、富士通が必死で作ったのがこの「アローヘッド」。年明けから実戦投入されていて、ミリ秒単位で売買を処理できるのがウリ(実はこれでも海外より遅いんだけどね。まあ売買の仕組みが少し違うけどさ)。
さてそうなると何が変わるのか。ヘッジファンドなんかの海外投機筋は、トンデモない高速なマシンを専用線につないで、猛烈な速さで売り買いを処理してしまう。デイトレーダーなんかが画面を見たときは、もうあらかた美味しいところは売約済み。
さらに海外では「フラッシュオーダー」というオプションが有料で用意されていて、一般投資家より0.3秒ほど(笑)早く取引情報がもらえるサービスまでやっている。つまり、この300ミリ秒ほどの間においしい売買はすべて成立させて、一般公開時にはペンペン草も生えていないという状況が発生してしまった(さすがにこれはマズいってんで自主規制やら禁止やらの動きがありましたが)。
こうなるともう速さは力なわけで、より高速なマシンを、より取引所に近い場所の専用線につないで使ったものが勝つという、まさに弱肉強食の時代が幕を開けちまったわけです。ここまでくると商売なんだかハッキング合戦なんだかわかりませんな。
ただひとつ言えるのは、個人のデイトレーダーの時代はこれで終わるってこと。さすがにもう無理でしょう。それなりのマシンにソフト入れたところで、専用線にぶら下がってる業者にはかないませんって。金をもってるやつらが根こそぎかすめとっていく時代になったってことであきらめなさい。
あ、そうだ。チケットぴあの転売屋でも始めてみたら。寝台特急カシオペアの予約とか。人気らしいぞ。IT化が遅れてるところなんか狙い目か?いやいや、カタギになりなよもう。一緒にカレー屋でも始めない?